体験記 「特許」

 じつは昨年末から、特許申請に取り組んでいる。
 もう何年も前から、取り組んでみたいテーマだったが、最初の敷居が高かった。これはと
いうような発明がなかなかできなかったし(笑)。書類の書式がうるさいし、独特の文面を
書くのが難しいし(権利が広くとれるような記述とか)、いろいろとお金もかかる。

 特許をとっても、その発明が「儲かる」事が保証されるわけではない。このへんを勘違い
している人も多いように思う。それと増毛の広告に「特許取得!」と書いてあっても、
あくまでも新規の発明として認められただけであって、その効果が確かという事が認めら
れた訳ではないと思います。

 大企業の社員がノルマでしょうがなく出しているやつとか、永久機関とか、デンパ系
とか(笑)、一銭にもならないような特許申請が多くて、特許庁の処理に時間がかかって
いるとのこと。

 そして、とりあえず出願しておけば、競合他社などに対する防衛になるようで、出願だけの
分(審査請求しない)も、たくさんあるようです。

 さて、例によって?、自分のメモも兼ねて、特許申請の流れを書いていこうと思う。現在
進行形なので、徐々に内容を書き足していく。
 なお、ここに書かれた内容については、いっさいの保証がないことを明記しておきます。
あくまでも参考として下さい。
 それから、私は弁理士ではない事、特許に関して相談を受けない事、書類作成の代行
などをしない事も明記しておきます。



●本
 最初は、「特許出願のしかた」みたいな本を図書館で読みあさったり、買ってきたりした。


 最初に買ったのがこの本(1996年)。
 「図解 特許・実用新案出願のしかた」 監修:大塚康英(弁理士)、発行:西東社
 ISBN4−7916−0258−7、1996年2月20日発行、定価¥1,500(本体¥1,456)

 この当時は、ようやくFD(フロッピーディスク)出願ができるようになった頃だと思う。ただ、
図をイメージスキャナで読ませると書いてあるのだが、画像フォーマットは色々あるし、どれを
使うのかまでは書いてない。普通のワープロで作成できるとあるが、それも各社いろんな
ファイル形式があると思うが・・・。
 でもこの本は、丁寧に説明されているし、書式集があるし、イラストや色刷りで読みや
すかったから、ずいぶん勉強になった。さすがに現在では内容が古くなったが・・・。

 また、その当時は、まだインターネットが身近ではなく、特許の検索はニフティを利用していた。


 2001年に買ったのが、次の3冊。

 ちょうど長崎県内の企業の展示会が開催され、そこで発明協会が販売していたもの。
 3冊とも買ってきました。

 (左) 「特許出願のてびき」
     編集:特許庁、発行:社団法人発明協会
     2000年7月3日 改訂29版2刷発行
     ISBN4−8271−0005−5
     定価:本体¥858+税

 (中) 「実用新案出願のてびき」
     編集:特許庁、発行:社団法人発明協会
     2000年4月1日 改訂34版発行
     ISBN4−8271−0006−3
     定価:本体¥858+税

 (右) 「工業所有権標準テキスト 特許編」
     企画:通商産業省特許庁、制作:社団法人発明協会
     発行:社団法人発明協会
     2000年8月10日 第2版2刷発行
     ISBN4−8271−0543−X
     定価:本体¥500+税

 この中で一番役に立ったと思うのが「工業所有権標準テキスト」で、写真とか漫画がたくさん
あって読みやすい。値段も安いし・・・これだけ買っておけばよかった?(あくまでも個人的見解)。

 そのほか、特許庁や発明協会、弁理士さんのWebを探せば、特許申請の仕方とか、書式が
閲覧、ダウンロードできたりする。たとえば http://www.ncipi.go.jp/ とか。

 本を買うとしたら、ていねいに説明されていて、最新の内容の本を1冊だけ買うとよい。
その本に、気づいたこと、自分で調べたことなどを書き込んでいく。



●特許を知る
 「自分の発明」が、すでに特許として登録されていないか検索してみる。現在は、特許庁の
特許電子図書館ホームページから、公報テキスト検索などが利用できる。但し平日の昼間は
とても重たいので、早朝とか深夜、休日に利用すれば応答が早くストレスを感じない(笑)。
平日でも、昼休み(昼12時〜13時)は比較的、応答が早いようだ。

 それから、特許とはどういうものか、いろんな特許を読んでみる。
 テレビショッピングの商品とか、カツラとか増毛の広告を見て、特許取得!!とか言っていたら
ほんまかいな?と、すぐ調べてみる。

 たとえば、これは天ぷら粉の袋に書いてある「特許出願中」だが、こういうのをひとつひとつ
調べてみると面白いかもしれない。
 いつまで「特許出願中」なのかも興味深いことだ(笑)。今度、この天ぷら粉のメーカーに
問い合わせ(というかツッコミ)してみよう。


 調べてみたら、
     特開2000−201639
     特開2000−175643
     特開平10−052232
あたりが、どうもそれらしい。いずれも審査請求は未請求でした。このまま放置しておくと
取り下げになります。その時、パッケージはどうするんでしょう?そこまで気が回らないかも? (^_^;)

 なお念のため、私は特定企業を批判とか攻撃するつもりはありません。あくまでも特許の一例として
ここに示しただけです。さらに言えば、この天ぷら粉は常備していて、愛用しております(笑)。


 あと面白いのがデンパ系とか、トンデモ系とか、有名人の特許です。発明者の欄に、思いつくまま
名前などを入力し検索をかけてみる。

 たまたま長崎県内の特許などを調べていたら、こんなのがありました。
 (1)実開平6−55648 宇宙プラズマ健康法用コイル付き基盤
 (2)実開平5−29545 宇宙プラズマ健康法用基盤
   → (1)と(2)のどちらだったか忘れましたが、審査請求されています。効果は実証できるので
     しょうか?
 (3)実登3069657 イカ釣り用引掛具
   → 図のイカがなんか良いです(笑)。

 あと、「永久機関」の出願が毎年いくつかある、とどこかで読みましたが、さて実際どうなのか調べて
みました。公報テキスト検索で、発明の名称に永久機関と入力しました。すると30件ほど出てきました。
 特開2000−297742は、タイトルがやたらに長い。代表図は、手書きみたいです。
 いくつか内容を見ましたが、無理っぽいのばかりでした。

 ひょっとしたら、と思って「反重力」、「重力制御」、「Nマシン」などのキーワードでも検索してみました。
反重力は、たとえば特開2000−345953があります。図がグチャグチャです。

 大仁田厚の実用新案、某宗教団体の教祖名義の特許(焼却炉)、鈴木荘能子(その子/こういう
漢字だったかな)の特許(料理)、そうそう、ノーベル化学賞の田中耕一さんの特許とか、中村修二
さんのLEDの特許など・・・・・・。
 中松義郎(ドクター中松)で検索したら、ちょっとここには書けないような、性行為に使うらしい
特異な形状をした(笑)器具とか、頭のよくなるふりかけとか、怪しいのが(あくまでも個人的見解)
いくつも出てきて楽しめました(笑/あくまでも個人的)。

 じつは私の名前で検索したらいくつも出てきて、どうも某製薬会社に同姓同名の方がいらっしゃ
るようです(笑)。
 あとは、同級生の名前を片っ端から入力してみて、そういや、日立の中央研に行ったアイツはと、
おお、特許出してるし〜、と、妙に懐かしくなったりする。


 さて、実際の特許を読んでみると、文章が妙にくどいというか、しつこい書き方をしている。
たとえば、こんなふうに・・・。

>    【請求項1】 電源供給点に短時間の・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
>   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
>   ・・・・・・・・・・・・であって、
>    前記電子機器が誤動作を起こす・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
>   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
>   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
>   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・方法。

>     【請求項2】 電源供給点に短時間の・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
>   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
>   ・・・・・・・・・・・・であって、
>    前記電子機器が誤動作を起こす・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
>   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
>   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
>   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・方法。

>     【請求項3】 前記請求項2記載の電子機器の誤動作防止方法に使用する・・・・・・
>   ・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
>   ・・・・・・・・・・・・であって、
>    前記電源供給点から電源接続回路を・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・誤動作防止装置。

 請求項1と2は、最初の3行が同じで、あとの部分だけ異なっています。請求項3は、請求項2の
内容に加えた内容となっています。
 権利をおさえるために、あらゆる組み合わせをくどくどと書き連ねているようです。



 


特許出願の手順
 書類がいくつもあって、何をどうやって、どれから手をつけていいのやら最初は訳がわからない
と思います。
 結局、出願方法は書面か、発明協会などの端末を利用したオンラインのどちらかで、書面だと
電子化手数料がかかります。オンライン出願ならもっとも安く出願できます。

 そんなにしょっちゅう出願しないのなら、オンライン出願がもっとも安いです。特許印紙代¥21,000
+書留料金¥540(だったかな)で、端末の利用料はかかりません。あとは、プルーフといって、要するに
控えですがそれをプリントすると、1ページあたり31円だったかな。

 いまはパソコンが普及していますから、書面でもオンラインの場合でも、テキストエディタかワープロ
ソフトで文章を打ち込む事です。
 今回は発明協会の共同利用端末を利用しますので、この場合で説明していきます。
 書類ができあがったら、フロッピーディスクに入れて発明協会に持参します。図は、プリント
アウトしたもので良いそうです。鉛筆書きはいけませんが、コピーすれば良いそうです。いずれに
しても図面は、備え付けのスキャナで読みとってもらえるそうです。


 さてオンライン出願には、事前手続きが必要になります。
 以下の例は、会社(法人)が出願人の場合です。

(1)最寄りの発明協会(支部)を調べます。
  これは発明協会のWebを見ればわかります。
  今後、いろいろ問い合わせをしたり、実際に出願するときにお世話になります。


(2)まず必要な4種類の書類。
   1.電子情報処理組織使用届
   2.予納届
   3.識別番号付与請求書
   4.識別ラベル交付請求書


 ・電子情報処理組織使用届の書式を示します。

電子情報処理組織使用届
平成14年12月**日
特許庁長官   殿
1 届出者
   識別番号   *********
   郵便番号   ***−****
   住所又は居所 ********************
   氏名又は名称 **********
   代表者    ** **
2 暗証番号   ****
3 入出力装置に関する事項
   入出力装置番号 T*******


 ・予納届の書式を示します。

予納届
平成14年12月**日
特許庁長官   殿
1 届出者
   識別番号    *********
   郵便番号    ***−****
   住所又は居所  ********************
   氏名又は名称  ***********
   代表者     ** **
   電話      ****−**−****


 ・識別番号付与請求書の書式を示します。

識 別 番 号 付 与 請 求 書
平成14年12月**日
特許庁長官   殿
1 請求人
   郵便番号    ***−****
   住所又は居所  *********************
   氏名又は名称  ***********
   代表者     ** **
   電話番号    ****−**−****
   ファクシミリ  ****−**−****


 ・識別ラベル交付請求書の書式を示します。

識別ラベル交付請求書
平成14年12月**日
特許庁長官   殿
1 請求人
   識別番号    *********
   郵便番号    ***−****
   住所又は居所  ********************
   氏名又は名称  **********
   代表者     ** **

2 識別ラベルの交付請求枚数    **枚


 実際に提出した書類をスキャナで取り込んだものを以下に示します。
  電子情報処理組織使用届、 予納届、
  識別番号付与請求書、 識別ラベル交付請求書


 これらはコピー(控え)なので、ファイルするため左側にパンチ穴があいていますが、実際に提出
する書類はパンチ穴をあけません。

 これらの書類を特許庁へ郵送します。書留扱いにするのが良いと思いますが、普通便でも
かまわないと思います(あくまでも個人的見解)。事前手続き書類ですから、何かあっても大した
損害はないでしょう。
 ただし、書面で特許願を郵送するときは、必ず書留にします。大切な書類ですし、提出日が証拠
として残る事も重要ですから!
 なお郵送料は、A4サイズが入る封筒で、普通だと¥120、書留では¥540でした(あくまでも
参考)。

 特許庁からの返送に必要な切手の同封が必要なのだろうかと思っていたら、それは必要ないそうです。
さっきの書類4種類だけ封筒に入れます。
 今後、特許申請をする予定のある人は、いっしょにまとめて識別番号付与請求書を作成、同封して
おくと良いです。今回は4人だったか、入れました。私は以前から識別番号を持っていました。


(3)特許庁から書類が届く。早くて2週間、遅くて1ヶ月ぐらい?
 書類が届くのを待っている間に、特許願を作成します。

 事前手続きの書類は、年末ギリギリ(12月17日)に提出しました。実際に特許庁からの書類が揃った
のは、年があけて1月10日頃でした。確か12月30日に1通、正月休みあけに日をあけて2通、あわせて
3通きました。そのうちの1通、識別ラベルが同封されていたものは書留でした。

 識別番号の通知はハガキで届きます。下記写真の左側がおもて面、右側が裏面です。


 表面の一番下に「*裏面1をお読み下さい。」とありますが、これは裏面の項目1を読みなさいという事で
す。問題はありません。

 なお識別番号は、特許電子図書館ホームページから、申請人識別番号の検索ができます。このハガキ
をなくしても大丈夫でしょう。但し、データベースが更新される時期があるようで、ハガキが届いたばかり
では、検索をかけても該当なしと表示されました。
 あと心配なのは、識別番号から住所がわかることです。プライバシーが心配ですよねえ?たいてい会社で
特許出願をする人は、会社の住所で登録して、「○○株式会社内」としているようです。実際の特許では
どういうふうに書いてあるか調べてみてください。

 そういえば二重登録を見つけました。ソーテックが、たしか番地の記載が漢数字か算用数字かの違いで、
二重に入っていました。申請人の名前で検索してみてください。


 そのほかの書類は、このような封筒で届きました。
 左のが普通郵便、右のが書留です(書留という文字と、書留のバーコードシールが貼ってある)。


 どうでもいいんですが、昨年末に届いた封筒の封は、ペリペリと簡単に開封できる面白いもので
した。特許出願中?(笑) 
 ところが後から届いた封筒は、普通のものでした。
 いや、ひょっとしたら、既にうちの事務員がカッターで切り込みを入れてくれたのかもしれませんが
わかりません。

 封筒には、「特許をみれば世界がわかる」などと書かれています。税務署の「この社会あなたの
税がいきている」を思い出します。


(4)こんな書類が届きます。
 送付目録、予納台帳番号通知


 送付票(ここでは略)、識別ラベルシート (この画像は加工しました。)
 氏名とバーコードが印刷されたシールです。

 送付票、電子情報処理組織接続通知 (この画像は加工しました。)


 電子情報処理組織接続通知(共同利用者)注意事項



(5)特許願を書き上げる。
 文章をひねり出すのが大変です。
 どういう文章にすれば良いかは、いろいろな特許をたくさん読んで研究しました。まず気づくのは、とても
くどい書き方になっているという事です。日常会話とはかけ離れています。

 たとえば、パチンコの遊び方なんか改めて説明するまでもありませんが、それをあえて特許願の中で
説明すれば・・・
      遊技場での遊技方法は、まず遊技媒体の貸し出しを受けるための対価として現金または
     プリペイドカードを遊技媒体貸出機に投入し支払って遊技媒体の貸し出しを受け、それを遊
     技機に投入し遊技機を操作し遊技を行う。遊技の結果、大当たりにより獲得した遊技媒体を
     遊技媒体計数機により計数しそれ相当の景品に交換し、特殊景品は遊技場外の換金所にて
     現金と交換する。

 それから、日常会話では絶対出てこないような言い回しがあります。「適宜且つ有効に作用せしめ、」
とか。「〜に、あっては」という言い方は、警察とか消防関係で「マル走にあっては、」なんて無線で
言いませんかね。お役所系ですね。
 ※ちなみに、「サザエさん」で、波平さんが「さよう」と言いますが、これも使いませんね。

 くどい書き方をするのは、あいまいさを無くすためだと思います。
 その一方で、「パチンコ屋」を「遊技場」と書いて対象をぼやかしていますが、これは権利を広く取る
ためです。遊技場なら、ゲームセンターも含まれます。「遊技媒体」も同様で、これをパチンコ玉と
書いたらコインは例外となり権利が主張できません。遊技媒体なら、パチンコ玉もコインも、カードなども
含まれます。

 なんというか、このへんのメリハリみたいなものが、特許願の文章を書くときのコツだと思います。


(6)弁理士さんに相談する。
 今回は、先行技術調査から書類作成、いっさいの手続きを自分でやる事にしましたが、ちょうど
その日に発明協会で無料発明相談会が開催されていたため、なにごとも経験と思い参加しました。

 昼すぎに発明協会に電話したら、意外?にも2人が順番待ちしているとの事。3時ぐらいに
行ってみたら、まだ相談中で、5時半ぐらいまで待ちました。県の工業技術センターは、個室以外
暖房がなくて寒いのです。

 最初は、何から話してよいやら困ってしまいました。何しろ、昼ごろに発明協会のホームページ
を見たら、今日が発明相談会だと知って、それじゃ行こう!と、これだけですからねえ(笑)。
本当は、あらかじめ質問を準備しておくべきです。せっかくの機会なので時間を有効に使いたいも
のです。

 同行した者が、基本的な部分から説明を始めたら、弁理士さんは「それだけだと、そういう概念は
公知ですから特許にはなりませんね」との事。簡単に結論を出されてしまいましたが早計です。
それだけじゃないんです、じつは・・・(内容は、これを書いている段階では出願前ですから、ここに
書けません)・・・という機能があるのですと話したら、ああ、それなら何とかなるでしょうと。もう少し
ソフトウェアの部分を詳しく書けば良いでしょうとの事でした。

 そして私が生まれて初めて書いた、試行錯誤しながら書いた「特許願」を見てもらいました。
 すると、「はじめてにしてはよく書けていると思います、よく研究されています」と言われて感激し
ました。こんなのでいいのかと、一人で誰にも相談できずに、毎日書き直していて自信がなか
ったですから、そりゃもう嬉しいです。
 弁理士さんも、最初の頃は、なかなか文章が書けなかったとの事でした。

 無料相談会なので、あまり細かくは見てもらえませんでしたが仕方ありません。たぶん、これは
弁理士さんの営業の一環であって、この場で、先生お願いしますとなれば契約して、お金を払って
仕事を頼むのかもしれませんね。

 あと特許願の【発明の名称】で、適切な名称に迷っていたのでアドバイスを受けました。これも
ここには書けませんが、こういう言葉にすれば広い意味になるから適切でしょうと教わりました。


(7)特許印紙を購入、予納書発送
 大村郵便局に特許印紙を買いに行きました。やはり、めったに出ないらしく「倉庫から出して
きますので少々お待ち下さい」との事。5分ぐらいで受け取る事ができました。地元の人は発明
協会で買ってるのかな?

 1万円印紙は緑色の印刷で、1000円印紙は紺色の印刷でした。図柄は同じで、なんかフラット
ケーブルというか基板パターンというか、そんな感じの図柄です。その4本のフラットケーブル?が
重なった図で、PATENTという文字などがあります。これは工業所有権の特許、実用新案、商標、
意匠をそれぞれ意味していると思います。

 予納書に1万円印紙を2枚、1000円印紙を1枚貼って、これで21,000円です。割り印はしませ
ん。これを封筒に入れて簡易書留で発送しました。書留の受領書は証拠になりますので大切に
とっておきます。
 予納書は念のためコピーをとっておきます。

 ・予納書の書式を示します。

予納書
平成14年12月**日
特許庁長官   殿
1 予納台帳番号   
2 予納者
   識別番号    *********
   郵便番号    ***−****
   住所又は居所  *********************
   氏名又は名称  **********
   代表者     ** **
3 納付金額    金 21,000円
------------------------------------------------------------------------
   (21,000円)
        ここに特許印紙をはり付けること


 下記、左は予納書です(控えの白黒コピーですから特許印紙の色は実際と異なります)。特許印紙を
貼り付けて、封筒に入れ特許庁長官あて書留で送りました。
 右は書留の領収証書、書留郵便物受領証、特許印紙の領収証書です。

 書留郵便物受領証は、予納書で特許料(特許印紙)を送付した証拠になりますので大切に保存します。
ついでにwww.yusei.go.jpの郵便物追跡サービスで到着を確認してプリントアウトしておくと安心でしょう。


(8)特許願の最終見直し。
 出願前に、何度も文面を見直して確認します。共同発明者がいる場合とか、社内の同じ開発
グループ内など、みんなで読んで修正すべき点がないか確認します。
 提出の前日になって、急に修正したくなった。その2時間は無我夢中でキーをたたいていました。

 修正に関しては、ある1カ所の修正が他の部分に影響を与えるかもしれないと常に考える事です。
関連している項目もあるので。


(9)発明協会でオンライン出願。
 午前中に地元の発明協会に電話して、午後から大丈夫ですか?と聞いたら、担当者不在でハッキリ
お答えできませんがタブン大丈夫でしょう、問題がありましたらお電話差し上げますとの事。それじゃ
2時に行きます、と回答しました。

 その時間に行ったら、係の人から特許願を見せて下さいと言われました。プリンターで出力したものを
渡したら、最初の2〜3ページはじっくり読んでいましたがあとはパラパラと見ていました。まあ致命的な
問題がなかったのでしょう。 (オンライン出願でフロッピー持参の場合でも、プリンターで出力したものを
持っていくようにして下さい)

 指摘されたのは次の2点です。

(1)【国際特許分類】の欄が空白だが、紙出願の場合は空白で構わないがオンライン出願で空白に
するとエラーになるので、【国際特許分類】の項目自体を削除して下さい。 →出願の端末上で修正
しました。

(2)【発明者】の欄で、【識別番号】と【氏名】の記述だけで【住所または居所】が無い。記入が必要で
は? →私は【識別番号】があれば【住所または居所】を省略できる、と本か何かで見たのでそのよう
にした。出願の端末ではエラーにならなかったので問題ないと思う。係の人が知らなかっただけかも?
 【識別番号】があっても【住所または居所】は省略せず書いておけば無難でしょう。最初からそうして
おけば良かったですけど。

 さあそれでは行きましょう、と端末が設置されている部屋に行きました。
 おねーさんが、 お・し・え・て・あ・げ・る(はぁと) とか、をいをい(笑)

 係の人は、端末の操作方法を教えるだけで、操作自体は出願人がして下さいと事前にどこかで
読んでいましたが、実際は、初めてという事もあったのか、ほとんどの操作をしてもらいました。暗証
番号の入力だけは自分でやりました。

 フロッピーには、Wordとテキスト形式でファイルを保存していきました。Wordは出願の端末で
読み込めるそうです。
 特許願のファイルをフロッピーから端末のフォルダ(”前田様”というフォルダが作られていた!)へ
コピーして、そのコピーしたファイルで作業します。

 端末は普通のWindowsのパソコンで出願用ソフトがインストールされていました。

 Word上で書式チェックをしているように見えましたが、自分で操作しなかったのでよく分かりません。
初めての出願の場合は、こういう操作をします、と出願人の識別番号と暗証番号を入力して回線を
接続し何かやっていました。

 書式チェックをかけました。特にエラーは出ませんでしたが、警告として「要約は200〜400字以内」
と表示されました。これは推奨値であり、修正は必須ではありません、との事。

 Wordの文書を、特許庁に送信するファイルに変換して図をスキャナで読み込み貼り付けました。
スキャナは、そこらへんで1万円前後で売ってるヤツじゃなくて、原稿を何枚も重ねて逐次読み込みでき
る方式でした。
 自分でスキャナを持っているからと、ヘタに読み込んだファイルを持っていくよりも、プリンターで出力
したものか、または手書きの場合はコピーを持参して、ここでスキャンしてもらうのが間違いありません。

 送信前の確認で、画面上で最初から最後まで目を通しました。まあ文書をそのまま変換しています
から基本的に大丈夫でしょうから、ザッと見ました。特殊な記号や文字はバケる可能性があります。
ちなみに φ は大丈夫でした。

 送信しても大丈夫ですか?と最終確認です。はいどうぞお願いします! ・・・ 行きました!!

 「プルーフ」といって、要するに控えですね。特許庁に送信したファイルが間違いなく届いているか
確認するためのもののようです。プリンター出力で1枚30円でした。
 次に示すのは、左より「受領書」、「申請書を接受しました」、「特許願の1ページ目」、「図面」です。
接受なんて言葉は初めて見ました。受け取るという意味です。
 ”申請書を受け取りました”と書けばいいのに? (^_^;)


 それと「特許電子出願共同利用端末機器使用者登録届書」というトンデモなく長い漢字の名前の
書類に記入しました。これは複写式で、2枚目を出願人がもらいます。
 「印」とありますが、ハンコは結構です、との事でした。


 プルーフの出力料金を払い領収書をもらったら、「はいこれで終了です」。
 この端末が置かれている部屋は、特許関係の文献の閲覧室で、大量の文献がおさめられて
いました。「閲覧は自由」と言われたのでしばらく本を見たり展示物を見たりして時間つぶしを
してきました。

 展示物で犬のクソを回収する器具がありましたが、犬のクソの代わりに「かりんとう」が置かれて
いました。あまりにもリアルです。見れば見るほどリアルです。当分かりんとうが食えません。

 (いま、かりんとうを食いながらこれを読んでいる方へ: 写真1写真2


 これで出願はおしまい。
 じゃ、そういうことで。










 おまけ。

 出願しても、それで終わりではない。
 審査請求しても、それで終わりではない。
 審査をパスして特許権が成立しても、それで終わりではない。

 出願して1年6ヶ月経過すると公開(公開特許公報に掲載)されるけど、それだけなんだね。
まあ、出願した時点から「特許出願中!」という営業トークは使える(笑)。

 審査請求すると何年もかかるようだ。いろんな理由がつけられて却下されることがあるら
しい。ねばり強く交渉して、特許というものは認められるものらしい。このへんは経験がないので
わからないけど。

 そして特許権が成立しても、競合他社がつぶそうとする事がよくある。異議申し立てというん
ですか、お互いにつぶしあいをやっている。そういう情報が掲載されているところがあります。


 最近買った本「俺が、つくる!」(岡野雅行著/中経出版)の16ページの最後から読むと、
個人で特許を取っても、大会社はプライドが高いからその特許を黙って商品化してしまう、
裁判を起こしても賠償金もあまり取れない、などと書かれている。
 つまり特許をとっても、大会社が頭を下げて使わせてくださいと言ってくるとは限らない
んだな。個人とか零細企業はナメられる。

 特許じゃなくて民事裁判だけど私も裁判の経験がある。原告の証人をした。あれこれ準備
とか調査とか書面作成などに時間とエネルギーを浪費する。それに何年もかかる。個人で
弁護士を雇うのも大変だ。大会社だったら顧問弁護士を何人もかかえているだろうし、法律
問題を専門に扱う部署もあるだろう。個人は弱い。


●2月20日
 今日、特許庁から封書が届いた。何だろうと開いてみたら、手続補正指令書だった。
【発明者】の項目で、【住所又は居所】を省略したのがダメだった。
 こんなふうに、識別番号と氏名しか書いていなかった。 ↓ (例)

     【発明者】
       【識別番号】   123456789
       【氏名】      麻枝 禄萬伍仙権三郎

 識別番号を書けば、【住所又は居所】は省略できると、どこかで読んだ事があったのだが?
調べてみたら、ココだった。
 http://www.jpo.go.jp/shoukai/yokuar08.htm

 しかーし!あらためてよく読んだら、【発明者】のところでは、そのようにできないようだ。
【特許出願人】のところでは、【住所又は居所】の項目およびその欄は省略できるとハッキリ書い
てある。

 なんか、ややこしいですな!!
 省略できると書いてあっても、一応、省略しないで全部の項目を書いておくようにしよう。それ
が無難。
 次のようにしました。

     【発明者】
       【識別番号】    123456789
       【住所又は居所】 志村県松戸市どこかの町123−4 神田川荘204号
       【氏名】       麻枝 禄萬伍仙権三郎


 なお、30日以内に手続補正をしないと却下!だそうです。
 オンラインで手続きをする予定です。

 届いた書類一式。
  発送目録、 手続補正指令書(方式)1/2、
  手続き指令補正所(方式)2/2続葉、 注意1ページ目、
  注意2ページ目。





 手続補正書の書式を示します。

【書類名】        手続補正書
【提出日】        平成15年2月**日
【あて先】        特許庁長官    殿
【事件の表示】
  【出願番号】     特願2003−******
【補正をする者】
  【識別番号】     *********
  【住所又は居所】  ***********************
  【氏名又は名称】  **********
  【代表者】       ** **
【発送番号】       ******
【手続補正1】
  【補正対象書類名】 特許願
  【補正対象項目名】 発明者
  【補正方法】      変更
  【補正の内容】
【発明者】
  【識別番号】     *********
  【住所又は居所】  **************************
  【氏名】        ** **
【手続補正2】
  【補正対象書類名】 特許願
  【補正対象項目名】 発明者
  【補正方法】      変更
  【補正の内容】
【発明者】
  【識別番号】     *********
  【住所又は居所】  ***************
  【氏名】        ** **


●2月24日
 手続補正のため発明協会のオンライン端末を利用してきました。
 識別番号の件は、発明協会の方も、勉強になりました、との事でした。

 ところが上記の書式を見てもらったら、【発明者】には【識別番号】は不要!!だそうで
す。ややこしいです。
 今後は、書式のチェックリストを作って、それに従って作成およびチェックをしたいと思います。

 それとプルーフの出力料金ですが、1枚30円です。但し、本文の枚数だけではありません。
「受領書」と「接受しました」が各1枚です。とくに「接受しました」は、30円払うのがもったいない
ような気がします(笑)。

 今回の手続補正では本文が1枚でした。さっきの2枚を足して3枚。90円を支払いました。



●3月10日
 忘れた頃に、また特許庁から郵便物が届いた。書留で。
 エーッ、また何か問題があるのか〜?と、開けてみたらそうではなくて、「予納残高通知」
でした。



 特許出願の料金は、あらかじめ予納書で納付するわけですが、その残高がいくらなのかを
連絡してきたわけです。右の「予納残高通知」に入金と出金の内容が書かれています。
 予納書で納付すると「入金」され、特許出願などをするとその分の金額が引かれ「出金」と
なります。


●3月13日
 また書留が届いた! エーッ、まだ何かあるの?

 「職権訂正」だそうです。これは特許庁の審査官が、軽微な誤りを訂正してくれたわけです。

 ”この出願について、平成15年 2月24日付け提出の手続補正書に係る手続について、
下記のとおり、特許庁の電子計算機に備えられたファイルへの記録を訂正したので通知し
ます。


 ホッ、特に自分がする作業は無いようです。書類の内容だけ確認しました。問題ありませんでした。

 「ファイル訂正通知書」には、次のように書かれています。
> 訂正原因
> 職権による訂正
> 訂正個所
> 一の訂正単位である「発明者」の補正を【手続補正1】及び【手続補正2】で行っていたため、
>【手続補正2】を削除し、【手続補正1】に纏めました。

 2月20日の手続補正指令書に書いてある書式で、やったのになあ・・・・・・わけわかりません。
その例に、【手続補正1】、【手続補正2】でそれぞれ【発明者】の項目があるから、そういうふうに
書くんだと受け止めましたよ。そしたら違うって。なんだそりゃ。




 もう、あとは何もないよね?(笑)

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