解剖室 「電気炊飯器」

 私は、自分が所有する電器製品は、すべて一度は分解したつもりだった。ところが、毎日お世話になっている炊飯器を
まだ分解していない事に気づいてしまった。
 RZ−DM3(日立ホームテック製)、これは一人暮らしを始める時に、ディスカウントで1万円で安かったから買ったヤツだ。
これまで2年間、そこそこうまいメシを炊いて食わせてくれた相棒だ。そしてこれからも頑張ってもらわなければならない。

 しかし日立の炊飯器ってあまり聞かないなあ。やっぱりナショナルでしょう。「新・電子立国」で、炊飯器の開発をやって
いたのを見たけどあれはナショナルだった。

 とりあえずバラバラマン。

 う〜む、明日のメシは大丈夫だろうか・・・。


 底にはコードリールがネジ1本で取り付けられていた。中身は、たぶんゼンマイが入っているのだろう。「コードリールは
分解しないでください」という刻印があった。分解したらビョーンと飛び出してきてアブナイんだろう。それに、開けたら元に戻す
のは死ぬほど大変かもしれない。
 ガキの頃、電器店のオヤジがうちの掃除機を修理しに来た。その時にコードリールの中を見たし、その後、捨てられていた
掃除機を分解してゼンマイを取り出したりした。ムチだと言って、友達とお互いに振り回して遊んだ記憶がある。いろんな意味で
アブナイ、ガキだった。

 コードリールには2本の電極があり、圧着端子がさしこんであるだけなのですぐに取り外す事ができた。すると底ブタのネジが
見えたので、これらを全部はずし、底ブタをガコンとひっぱったら中身が見えた。

 中身は簡単で、基板が「デンゲンキバン」と「パネルキバン」の2枚で、あとはヒーターと温度センサーぐらいのもの。
ヒーターは、底にひとつ、釜を一周囲んでいるのがひとつ。基板につながっていて、それぞれ独立に制御しているようだ。

 「デンゲンキバン」にはリレーとトライアックが付いていた。これでヒーターの電流を制御しているのだろう。メシを炊いている時に
カチッという音がしていたので、リレーが入っているだろうとは思っていた。

 気になったのは基板の色が変わっている事だ。1.7Kオーム10ワットのセメント抵抗を中心に、茶色に変色していた。発熱体は
これだけじゃなくて、周囲にも1ワットか1/2ワット級の抵抗が10本ぐらい並んでいる。紙エポの基板だから変色は仕方ないが、
抵抗の温度サイクルでのハンダ割れが将来発生する可能性があると思う。

 釜の底には温度センサーが付いていて、耐熱線で「デンゲンキバン」に接続されていた。サーミスターだろうか?
 それにしても、釜と、筐体の間は、けっこう空間がある。保温のとき、外側をさわると結構暖かいから、熱が逃げているのかもしれ
ない。その分のロスが気になる。グラスウールを詰め込んではどうか?炊飯のとき過熱するかな?

 パネルに「マイコン」というロゴがついているぐらいだから、そのご自慢のマイコンとやらを拝もうと探したら、「パネルキバン」
についていた。三菱のM34200M4−422SPという型番で、64ピンのシュリンクDIPで結構でかい。
 データシートを探してみた。MITSUBISHI SEMICONDUCTORS・・・マイコンのところを探したが、この型番は無かった。炊飯器は
99年製で比較的新しいが、マイコンはすでに生産中止になっているのかもしれない。
 なお型番からの推測だが、これは64ピンと図体がでかいのに中身は4ビットで、LCDドライバを内蔵しているようだ。

 クロックは2メガのセラロックが付いていた。うーむ・・・クロックアップすればメシが早く炊けるか?(馬鹿)

 そうだ、セラロックだから周波数の誤差は比較的大きいはずだ。温度の影響はモロに受けると思う。たとえば、夏と冬では
タイマーや、炊飯時間に差が出るかもしれない。炊飯時の最初の温度上昇も気温に影響されるが、その問題は別として
純粋にCPUの実行時間の話だ。

 「パネルキバン」から出ている配線は7ピンのフラットケーブルで、解析は楽にできそう。2本は電源とGNDだろうし、温度
センサーとリレーとトライアックの制御・・・ぐらいだろう。ただ、電源が絶縁されていないのでそのまま外部にひっぱりだしたら
感電のキケンがあることに注意したい。オシロで波形を見てみたいが、電源に絶縁トランスをかます必要があるだろうな。

 基板から、温度センサーとトライアックの信号をひっぱりだし、外に計測器をつないで、「はじめちょろちょろ、中ぱっぱ・・・」
のパターンを取り出してやろうと思う。日立のホームページを見たら、「お釜」の測定から炊飯パターンを得たという。この炊飯器
がその機種なのか不明だが・・・この炊飯器からパターンをコピーすれば良いか(笑)。
 そして、マイコンをPICにとりかえて、自分なりのパターンでメシを炊いてみたい。というのは、おこげがほとんど付かないんだな、
こいつでメシを炊くと。火力が弱いんじゃないかという見方もある。だから、ヒーターのONパルスを若干のばしてやって、少し火力
を強めてどうなるか試してみたい。

 それと温度表示の7セグLEDなんかを追加したりなど、怪しくチューンしてみたい。クルマいじりをする人は多いが、炊飯器の
チューニングをするヤツなんて聞いたことない。チャレンジのしがいがある(笑)。とりあえず筐体に穴をあけて、コネクタをつけて
おくか。
 色々いじくるのはいいが(自己責任において)、しかし、改造中は使えなくてメシが炊けない。やはりここは、もう1台購入して、
今のやつは実験室用にするか?などと思ったりして・・・。

 話は変わるが、炊飯時の水加減は目盛りに従っていては上手に炊けない。最初は何もわからなかったから、書いてある通り
やっていて、結果をみてこんなもんかと自分を無理にナットクさせていた。だが、そのうちに冒険心が出てきて、水を少な目に
したらどうだろうと試したら良い結果が得られた。2合炊くなら、水位は2じゃなくて1.5ぐらいにしておいたほうが良い。
 朝から、メシがぐしゃぐしゃになっているとガックリだ。逆に、きれいに粒が立って、ちょうど良い固さの日はとても嬉しい。

 そうだ、こいつは短時間だったら停電しても元の状態に復旧する。つまり、保温中だったら、停電のあと再び保温になる。
きっと内部にスーパーキャパシタでも入ってるのだろうと、以前からにらんでいたが・・・中をみたらそんなもん、どこにも
無かった。大容量の電解でもなかった。たぶん、この小さめの電解で情報を維持しているのだろうか。
 ついこの前、大村では深夜2回のナゾの停電があった。1回目は起きてたので気づいて、炊飯タイマーをセットし直したが
その後、自分が寝ている間にも再び停電したらしい。朝起きたら、メシが炊けてなかった。ガーン。
 まあ停電中にタイマーが進まなくて、復旧してからタイマーが進んだら炊きあがりが遅れるだろう。そうだ、炊飯中に停電
したらアウトだよな・・・これはどうにもバックアップしようがない。UPSを付けるか?(をいをい)

 初期の頃の炊飯器を、20年ぐらい前に修理で見たことがあるが、マイコンが無くてもメシが炊ける事を証明していた。
なかなかよく考えられたカラクリだったと思う。ヒーターで釜を熱するのは同じだが、底に磁石が付いていて、ある温度に
達すると(キュリー温度)、磁力を失って離れるためスイッチが切れるという原理だった。
 いまでも炊飯器のカタログを見ると、隅のほうに小さく載っていたりする。

 あのS○NYは、初期の頃、あやしい電器製品を作っていたらしい。電気ざぶとん(焦げたとか)、電気炊飯器があった。
この電気炊飯器は、当時はやっていた電気パン焼き機をもとにしたものらしい。

 戦後まもなくの頃、電気パン焼き機というのがあって、これは木箱に電極板が2枚貼り付けてあるだけだった。ここに、
水と小麦粉と塩などを混ぜた生地を入れ、通電すると熱が発生して焼けるというものだった。電流が流れやすくするため
塩を混ぜるのがポイントだ。
 焼き上がりが近づくにつれて水分が少なくなる、つまり電流がだんだん流れなくなるわけだ。なんら制御装置を必要と
しない。うまい仕組みだと思う。この実験は、とっくに番組は終わったがNHKの「やってみようなんでも実験」でやっていた。
 なお、パンというものの、実際には饅頭というか蒸しパンのような感じになるようだ。
 この原理を応用すれば、ソーセージに電極を差し込んで通電することで焼き上がるようなものもできる。少々アブナイ
ような気もする。直列に電球を入れておいたほうがいいかも??

 そうそう、むかしテレビで、電気人間と称する人物が出ていたのを思い出した。フォーク2本に100ボルトを接続し、それに
ソーセージを差して焼いて見せていた。もちろんフォークは両手で握っていて、感電するはずなのに大丈夫だという見せ物
だった。
 素人相手だと思って馬鹿にしている。これはいくらでもトリックが可能だ。電灯線に触れれば感電すると思いがちだが、
なぜ感電するのか、その仕組みを知っていれば感電しないようにもできる。たとえば絶縁トランスを使って、その流れが
できないようにする。絶縁トランスの二次側は触れても感電しない。
 両方さわったら感電するが、さっきのソーセージは、両手で握っていても感電するほどの電圧にはならないと思う。人間の
抵抗はテスターではかるとわかるが数100キロオーム以上だ。ソーセージは、水分を含んでいるから抵抗値は、人間に
比べてかなり小さいと思う。抵抗の両端にかかる電圧は、抵抗値に電流をかけ算したものだが、ソーセージの抵抗が
小さいから、感電するほど電圧は高くならないはずだ。焼き上がってくると抵抗は大きくなるからだんだん電圧が上がっ
てくるだろう。番組をよく見ていたらスライダックがあって、こいつで電圧を調整していた可能性が高い。

 まあ100ボルトぐらいなら素手でいじっても大丈夫だろう(それならやってみろと言われても困ります・・・遠慮します)。
先生が電源を切らないで、そのまま電気工事をして見せてくれたことがあるが、ショートしたりして危なかった。やっぱり電源
は切るのが基本。

 脱線したけど、私はこの炊飯器の電気代を「エコワット」で測定して、側面に次のようにマジックで書き込んでいる(炊飯器
に限った事じゃなくて、家中の電器製品が対象)。
          電気代
            炊飯1合1回¥1
            保温12時間¥7
 保温は意外に電気を食うのだ。冷蔵庫に保管しておいて、レンジで数分かけてあたためたほうが安上がりかもしれない。
でも断熱材が入ってないから、それで熱が逃げてロスしているのかもしれない。このへんは極限チューニングする余地が
あると思う。
 念のため、「エコワット」の表示は1kWhあたり¥25なので、実際より若干多めだ。うちの契約だと15円65銭(120kWh
まで)、120kWhをこえたら20円70銭になっている。さらに燃料費調整単価が加わる。


 ヘヴィなエンジン(炊飯ヒーター)・チューンで、さぁ!峠を攻めろ!!(意味不明)

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